ハーフだって黒人だってひとりひとり違う

ちょっと気になる文章を読んだので、ひとこと(この投稿では、外国人と日本の両親を持つ子どもを、記事と同じく「ハーフ」と書きます)。
ハーフ、とくに黒人と日本人のハーフは運動能力が高いと主張したいようです。一見ありふれた、たぶん悪意のない記事でしょうが、この手のステレオタイプがもたらす悪影響をまったく考慮していません。たとえば、運動のできないハーフの子どもを傷つける可能性があるでしょう。スポーツ界で成功した場合でも、「黒人の血を引いているから当然だ」と、選手の努力を過小評価するかもしれません。一方、「あいつはハーフだから俺は勝てっこない」と、日本人の子供を諦めさせる可能性もあります。

「ハーフは美人」などと同様、固定化されてはいけない考えです。

川島浩平『人種とスポーツ』に、「黒人は運動が得意だ」というステレオタイプが蔓延したことで黒人青少年たちが自縄自縛に陥っている、という研究が紹介されています。《多くの黒人青少年が、自分の運動能力を過信してスポーツに打ち込み、勉強をおろそかにする状況》があり、《身体能力神話に支えられた運動競技熱が、黒人コミュニティの若者を袋小路に追い詰めてしまう弊害》が生じているそうです。20〜39歳の黒人男性でプロになれるのは4万7千人に1人に過ぎないらしい。

社会的偏見は差別と簡単に結びつきます。たとえば「女は地図が読めない」というステレオタイプの影響力は、男女が不公平な国ほど強く、公平な国になるほど弱いという研究があります。残念ながら、日本女性の空間認識能力は低いんだそうです。

ハーフは日本ではマイノリティです。彼らにはいろんな才能が備わっています。ステレオタイプに押しこめて多様性を打ち消してはいけません。

──おっと脱線。記事に戻りましょう。

深代千之先生が説く黒人の形質遺伝やATP(アデノシン三リン酸)に対するエビデンスレベルがどの程度かわかりませんが、氏は問題ある別のステレオタイプを語ります。

「日本人は2000年来、『農耕民族』として定住してきたので、それに適した、手足の短い体型になったと考えられます。

 それに対し、『狩猟』を中心に暮らしてきたヨーロッパ、アフリカの人々は、移動することの多い生活だったので、手足が長くなりました。当然、手足が長いほうが、素速く移動するタイプのスポーツでは有利になります」

私はスポーツバイオメカニクスの研究家としての深代氏には敬意を払っています。だからこそ、このようなウソ発言を見るのは残念でなりません。

子どものころからさんざん聞かされてきた、日本人は農耕民族、西洋人は狩猟民族だというナゾ理論を深代氏は肯定しています。でもね、西欧は日本列島より早く農耕を始めたし、定住だってしているではありませんか。日本の農耕の歴史が2000年前というのもはなはだ不正確。少なく見積もっても1000年は短縮しています。

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)

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